『劇場版 Free!-the Final Stroke- 公式ファンブック』、『氷菓 公式設定集』を買いました。

買い逃したら手に入らなそうな気がしたので、京アニショップで『劇場版 Free!-the Final Stroke- 公式ファンブック』、『氷菓 公式設定集』を買いました。

京アニ系書籍は無条件で買い!と思っているつもりなのですが、『劇場版 Free!-the Final Stroke- 公式ファンブック』は税込6,600円、『氷菓 公式設定集』は税込4,400円とアニメ系書籍としてはかなり割高で二の足踏みましたね…。

とか言いつつバッチリ予約して買ったので、その感想でも。

 

『劇場版 Free!-the Final Stroke- 公式ファンブック』

総ページ数120ページ。アルバム風なポストカード?特典とか描き下ろし綴じ込みポスターとかもあって装丁が凝ってます。

中身の方はキャラクター紹介から始まり、劇場版のストーリー紹介、コンテ抜粋、そしてキャストインタビュー、スタッフ座談会。全体的ににスタッフコメントが随所にあって、中身的にも満足度は高いです。

コンテ抜粋ページが面白い。

コンテ抜粋は計19ページあるうえ、河浪さんのコメントもあって嬉しいです。
河浪さんのコンテは端書きに愛が溢れてる感じが面白いですね。コンテの端書きって指示書きであったり、カメラ越しにキャラクターを見つめているような心象風景の解説が多いですが、河浪さんはキャラクターをかっこよくしてやってくれ!、みたいな激励が入り混じる端書き。例えば旭のカットだと、河浪さんは「昔やんちゃしてた不良が大人になったみたいなカッコよさで!!」とか書いてたりしてます。美術監督の笠井さんも本誌座談会でこんなことを言ってます。

笠井 『前編』の絵コンテの最初のページに、監督からの注意事項がいろいろ書かれているんですけど、それは大切にしようと気をつけました。「男の子感大切に オシャレに カッコよく(スマートに)」とか(後略)

指示出しとしてはもっと具体的なのが望ましい気がしますが、親目線のような感じの端書きに愛を感じますね。
河浪さんの親目線、というのを特に感じるのはキャラクター紹介ページ。他のスタッフはこのキャラクターのこういうところに気をつけて制作した…みたいな話をしていますが、河浪さんだけ各キャラクターへ語りかけるような、手紙のようなコメントを残していました。

 

コンテに話を戻します。
掲載されていたコンテで河浪さんの演出力を感じたのは、後編で凛が桜の木を見上げるカット。

東コーチから周りに甘えてる、と叱責され飛び出した凛が見つめる桜の木。小学校にあった思い出の桜と重ねてるわけですが、前編のラストシーンで桜の木に背を向けたあとだからこそ、余計に光って見えるのでしょう。都会の光の中でも存在感を放つ桜と、その輝きが自分にとってどれだけ大事かというのを凛が気づくシーンだったわけですが、凛のアップショットのコンテにはこういった端書きがありました。

桜の花びらなし(凛には届いてない)

なるほど、凛にとっては桜が思い出を想起させるとともに、その思い出が完全に届かないものになってしまったのかと、膝を打ちました。桜の美しさの裏側にある、遙と遠ざかってしまった凛の絶望感のコントラストがこのカットにはあったわけですね。
桜の色味や撮影処理も素晴らしくて、都会の建物や光の青さとのコントラストが強く出ている分、桜が幻想的に見えます。端書きを読むと、この桜の嘘みたいな綺麗さの理由がわかったような気がしました。

スタッフ対談も面白い。

京アニスタッフの対談ページも18ページとボリューミー。コンテページと合わせて40ページ近くあると考えると、全体の3分の1は京アニスタッフにクローズアップしてるということになるわけで、ナイスですね。
対談の組み合わせは以下の通り。

  • 河浪監督・佐藤達也さん・松村元気さん
  • 笠井信吾さん・米田侑加さん・高尾一也さん
  • 鵜ノ口穣二さん・篠原睦雄さん・内山周哉さん
  • 冨板紀宏さん・加瀬達規さん・高木美槻さん
  • 岡村公平さん・門脇未来さん


河浪さん・佐藤さん・松村さんの対談では佐藤さんの原画パートにも触れられてます。対談の中で遙に駆け寄るカットを挙げつつ「走りを描くのが好き」と語られていた佐藤さんですが、このカット、改めて見るとホントに上手です。

まず動きの流れの描写が上手。特に真琴の走り作画は真琴の思考がある感じがして良いですね。とにかく急いでやって来て、プールサイドで急減速をする。そのとき背中側に重心を載せるようにして、半身でステップを踏む仕草を入れる。ロケーションを意識した真琴の動きでもあるし、なんとしてもいち早く…という真琴の思考も見えてきます。

更に言うと、このカットにはここまでシリーズを積み重ねてきたからこその個性がありますよね。渚が止まったときの手の広げ方とか、怜の陸上経験者っぽいキレイなフォーム。走り作画の中にキチンとキャラクターの個性を尊重しているところに、アニメーションDoの「王子」たる所以がありますね。

 

その他にも岡村さんが自身の原画パートに触れていたり、メイキング資料も多々添付されている等、スタッフ対談ページはとても素晴らしいです。

6,600円と高めの値段設定ですが、メインスタッフのイラストメッセージもありますし、京アニファンなら是非って感じな内容でした。

氷菓 公式設定集』

最近、過去作品の書籍を出してくれるのがほんと嬉しいです。

ただ、仕方がないにしても設定資料だけが載っている本書はちょっと物足りないですね。たしかに設定資料の網羅性は素晴らしいですし、奉太郎姉のキャラデザイン(もちろん顔も載ってますよ)も載っていて特別感はあるんですが、そのデザインをした西屋さんのコメントや武本監督のインタビューとか、やっぱり読みたかったです。

新たに、というのは無理だとしても、当時発行されたアニメ雑誌でのインタビューとかをまとめてくれたりしてくれても良かったんじゃないかな、と思ったりしました。京アニ出版がやってくれないのはなんとなく察しがついてましたが、他のアニメムック本とかでそういうのを見てしまうと、もうひと工夫してくれ…と思ったりしてしまいます。値段的にもそれくらいやってくれても良いんじゃないかな、と思いますけど…。

西屋さんの私服デザインが良い。

本書を読んでいると西屋さんの私服デザインの良さに目が惹かれますね。
特に私服の緩さ、というか、シルエットの見えない感じはあんまり他作品でもみないような気がしました。

例えば以下の2つとか。

左側画像のえるはフルショットのカットがないので分かりづらいですが、エプロンもスカートもゆるっとした感じとか、プリーツ(っていうんでしょうか)の柔らかい感じとかすごく好きです。

右側画像の山西みどり(一番右の女子)の服もかわいいですよね。体のラインは見えないけど夏ということもあって足元の風通しはいい感じ。個人的にもオーバーサイズの緩めな服が好きなので、この柔らかい感じが結構刺さります。本編ではほとんどでませんが、後ろ姿のシルエットもカバンのゆるい感じとか、柔らかい生地の質感が感じられて良いです。

ED1衣装の設定と端書き。

ED1の衣装設定のページでは端書きにこんな記載がありました。

全体的に線を途切れさせる感じの描き方でお願いします(色トレスで線はつないでください)

これ、今でも同じ手法でやるんだと思うんですが、今やるとすれば更に撮影処理で線にグラデーションつけたりするんじゃないかなと思うんですが、どうでしょう。実線の部分はわりとそのまま画面に出ているのも、今見るとちょっと気になりますね。ここでの線の途切れって柔らかさの表現だと思うんですが、線がそのままな分、まだちょっと硬いように見えます。
『劇場版ツルネ -はじまりの一射-』のスタッフコメンタリーでキャラの内側にグラデーションを入れる撮影処理について言及していましたが、今の京アニ撮影部がこのEDを作るとすると輪郭線はどう処理するのか、内側のグラデーションはどう表現するのか、気になります(意図せず千反田風)。

 

ペラペラめくってても思いますが、西屋さんのキャラめっちゃ良いですね。普通の制服デザインの設定画もコケティッシュな気がします。服の柔らかい感じが伝わってくるからですかね。

西屋さんの絵を見るだけでも全然嬉しいですが、やっぱりプラスアルファが欲しい…そんな本書でした。

 

以上。

2冊と一緒に再販された『特別版 Free!TYM KEYFRAMES&DESIGN WORKS』も買ったんですが、初版のときに買ってました。ショック。
しかもこの本って何故か原画番号とか意図的に消してるんですよね。と、思いきや残してるところもあったりして、意味不明です。

京アニ出版、今後も応援してます。何卒よろしくお願いします。