『フルメタル・パニック! The Second Raid』映像特典 京アニスタッフ的見どころまとめ

最近久々に『フルメタル・パニック! The Second Raid』を見ました。京都アニメーションのメカ作品という意味でもレアですけど、残酷でシリアスな描写をここまで描いている作品もレア。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も戦争の悲惨さであるとか、人の死に関するエピソードがありましたが、本作のゲイツのような死を弄ぶような登場人物はいなかったですし、今振り返ってみると京都アニメーション作品の中で結構異質な作品だったのかな、と感じました。異質だからこそ普段見られない演出もあったりしてすごく面白かったんですけど、それと併せて面白かったのが映像特典。本作の映像特典はスタッフインタビューと京都アニメーションのスタジオ訪問がメインで、本放送前に放映された「前夜祭番組「ライトノベルの夜明け」」と各巻についてる「香港ロケハン特典映像」があります。
両方とも面白いシーンが多々あったので京都アニメーションのスタッフ見どころをまとめてみたいと思います。

 

「前夜祭番組「ライトノベルの夜明け」」

なんと行っても後半のスタジオ訪問。京阪宇治線木幡駅前にある第二スタジオに賀東招二さんが訪問、みたいな感じで進行していくんですが、スタジオ入り口で出迎える京アニスタッフの面々の中で露骨に目立つ石原さんがまず面白い。



武本さんが石原さんを一言で言うと「イノセント」と答えていたけれど、こういうところか…と納得したり。ついでに荒谷さんとか山田さんとかもいて、スタッフが全面的に駆り出されてる感じがまた面白い。

賀東さんが無造作に北之原さん作監修正中のタップをかっさらったり、池田晶子さんがOP原画パートに触れられそうになって手榴弾のモデルをおもむろに取り出したり、後々『涼宮ハルヒの憂鬱』HPの制作日記でマスコットキャラと化す猫のクロイさんが出てきたり、個人的見どころが満載。

最後は賀東さんと武本さんがアキバ(ソフマップ?)のアニメDVDコーナーで駄弁ってる映像。著作権フリーっぽいBGMに載せたナレーション「最終的に自分たちの作品の姿がここにあることを深く実感しているようでした」で締めるっていうのが、なんというか、教材DVDっぽくて笑ってしまいました。

「香港ロケハン特典映像」

本作主要スタッフ陣で行った香港のロケハン映像に賀東さんと武本さんがコメンタリーをつけています。基本的に香港の街をぶらぶらしてるだけの映像なんですけど、武本さんもコメンタリーで言っていますが「街の風俗」を収めてる映像が多くて、00年代の香港を写した映像としてはレアなものなんじゃないかな、と思ったり。

本編に娼婦が出てくるのもあって、ロケハンしてる場所もきれいなところだけじゃないんですよね。賀東さんが連れ込み宿の入り口まで行ってカメラ回してたり、いかにもヤバそうな雑居ビルをふらふらしてる映像があったり、実はかなりディープな映像な気がします。

京アニ演出陣は監督の武本さんと山本さんが参加。女子学生を執拗にカメラに収める二人とか仲良さそうに話している感じを見るとなんだかほっこりしました。賀東さんと武本さんの掛け合いもそうですし、終始おじさん達の和気藹々な空気が漂っていて、深夜にのんびりと見るのに最適。全部で3時間近くあるのでBGVとしても優秀です。

武本さんが京アニスタッフに具体的に言及した部分もいくつかありました。

  • 4話のシナリオはアクションが多くて作画陣に酷だった。コンテ打ちしてるときも三好さんに「端折れるところは端折ってください」と言っておいたけど、ほぼシナリオまんまのコンテが出てきた。あがってきたコンテをみて「うわぁ~」となった。

4話は三好さんコンテ演出で石立さんが演出助手の回。『響け!ユーフォニアム』1期5話(サンフェス回)もそうですが、三好さんの担当演出回は作画的なボリュームがすごい話数が多いです。ASがワイヤーアクションっぽい戦いをするっていうのもシナリオからで、序盤のユイファン戦も含めて作画カロリーが高い話数ですけど、そのアクションすべてがクオリティ高いのがすごいです。ただ、アクション以外にも凝ったレイアウトが多かったので武本さんが「うわぁ~」と思ったのはアクションだけじゃないかもですが…

  • 9話は明大前駅だったり井の頭線への乗り換えシーンがある。そこは実際に演出家がそのルートを歩いて取材していった。写真資料を元に絵作りをしていった。ラブホテルも担当演出と美術監督の鵜ノ口さんで実際に入って取材した。

9話の演出は北之原さん。鵜ノ口さんと一緒にラブホに入る絵面を想像すると、シュール。
京アニ作品でラブホといえば『中二病でも恋がしたい!Take On Me』ですが、パンフレットを見ると「アバン後から」は北之原さんがコンテをやっていて、「和歌山駅でバスに乗るシーン」からは武本さんのコンテなんだとか。ラブホテルのシーンはバスに乗る前なので、北之原さんがコンテを切ってるということになるわけですかね。『中二病でも恋がしたい!Take On Me』自体が過去の京アニ作品の舞台を辿るような一面がありますけど、北之原演出的にはラブホテルという舞台を再訪するという一面があったわけですね…!

 

上2つの箇条書きは要約ですが、コメンタリーでグッときた武本さんの発言があったので、そのまま文字起こしをしてみます。

「俺もやっぱ会社入って3週間でもうやめようかなと。うちの先輩にあたるんですけど、木上っていう人間のね、落書きとかを見せてもらったときに、回れ右して帰ろうかと。もうそれぐらい打ちのめされましたね。よく漫画とかで頭の上に稲妻が落ちるっていう表現あるでしょ。学生の頃とかは、こんなことあるわけねえよバッカじゃねえのとかって思うんですけどね、いや、あるんだこれがって。自分がね、よしこれやっていこうとかね、例えば多少なりともそれが好きで、それに打ち込んで、それなりに、中途半端な自信を持ちかけたときに、それをこう、完膚なきまでに打ち崩されるような、圧倒的なパワーを見せつけられたときの、あの自信の喪失感はね、すごい。絵見てるうちにだんだん意識が遠のいていくんです。」

笑いを交えて話されてましたけど、賀東さんの話や相槌を少し遮る感じで話し続ける武本さんから熱量が伝わってきて、とても印象に残りました。

 

「香港ロケハン特典映像」は賀東さん武本さん、お二人の雑談が終始面白いのでおすすめです。DVDBOXかブルーレイBOXであればぶっ通しで見られるので、なおおすすめ。秋の夜長に『フルメタル・パニック! The Second Raid』の映像特典を、ぜひ。