『特別編 響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』舞台挨拶(2023.8.5 新宿ピカデリー 11:50上映回)に行ってきました。

『特別編 響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』、ついに公開されましたね。感想も書きたいところですが、今回は8月5日(土)の新宿ピカデリー 11:50の回、上映後に行われた舞台挨拶についてまとめたいと思います。

司会進行は松竹の宮嶋さん。登壇者は原作者の武田綾乃さん、石原立也監督、小川太一副監督。

発言はママでなく要約。敬称略です。

本作の企画の経緯は。

小川 ドラマCD*1を作るとなって、物語を選ぶとき、「アンサンブルコンテスト」はボリューミーで選外となった。でもどこかで映像化したいよね、という話が京アニスタッフ内であった。そんな中、『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』から約4年もたってしまい、また、ファンの方の続編を待ち望む声もあり、「アンサンブルコンテスト」を題材に映像化しようとなった。「アンサンブルコンテスト」は『誓いのフィナーレ』と3期の間の時期の物語というのもあって、作りやすいというのもあった。

石原 ドラマCDのときに話があったのは忘れてた。

他に映像化の候補となっていたエピソードはあるか。

石原 覚えてないな…

小川 アニメオリジナルもありだよね、という話も出ていた。ただ、京アニ社内の吹奏楽経験者に話を聞いたら、アンサンブルコンテストは吹奏楽の記憶の中でも印象に残るものだった、という話を聞いた。あとは、いままで合奏ばかり描いてきているが、少人数編成を描くとカメラの向け方が変わるのではないか、面白くなるのではないか、という思いもあって「アンサンブルコンテスト」になった。普段だと久美子、麗奈、葉月、緑輝の4人にフォーカスが当たってしまう。つばめという普通の部員にフォーカスを当てられたことに、価値があったと思う。

武田先生と石原監督が初めて顔合わせしたときの思い出は。

武田 10年前くらいで、当時大学生だった。出版社の人と一緒に京アニに伺ったけれど、京アニ作品は学生時代から見ていたので緊張していた記憶がある。あとは迷子になって京アニの方に迎えに来てもらった記憶。京アニ所在地のGPSがずっと川底を示していて全然たどり着けなかった…。

響け!ユーフォニアム』シリーズでどれか一つ選ぶとするなら。

(スクリーン上に『響け!ユーフォニアム』シリーズのアニメ作品を作品公開順に並べた画像が投影される)

石原 10年前ってそんな昔に思えない…と言いつつ忘れていることは多いんだけど。10年の間には他作品も作っているけど、10年の割にたくさんやってきたなと感じる。

小川 自分は『劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』を選ばないと行けない気がする…*2。テレビシリーズの自分の話数*3を削ったりしたけど、もっとあすか先輩を描きたかった。

石原 私は『響け!ユーフォニアム2』。お話を作るときには終わりの部分が絵的に見えていると良いけれど、『響け!ユーフォニアム』のときはとにかくがむしゃらにやっていた。いろいろ要領を得た2期はやりやすかった。

武田 私も2期。アニメ作品として続くのか、という驚きがあった。あとは一番書いていて大変だったのがあすかだから。

1期制作開始当初のロケハンについて。

(スクリーン上に石原監督が撮影したロケハン写真が6点投影される。大吉山の東屋や東屋からの景色、JR宇治駅前のお茶壺ポストなどの写真)

石原 これは2014年6月5日、あがた祭の取材写真。東屋の写真にはちょうど柱に顔が隠れて花田十輝さんがいる。この日の翌日に武田先生と始めて会った。

小川 このときにはなかったものが今はあったりするから制作時には気をつけなきゃいけない。京阪宇治駅前とか、今だともっときれいになってる。*4

石原 この取材写真は一番最初のロケハンの写真。そのときから風景が変わったところもあるが、基本的にこのときの取材写真を軸に背景を描いている。

小川 石原さんの取材写真は東屋の写真が少なくて参考にし辛かった。東屋から見た景色の写真はいっぱいあるのに…。制作時の参考にするため、自分含めて京アニスタッフで大吉山に登った人も多い。

石原 今、3期のコンテ作業中だから取材写真がちゃんとあるかどうかっていうところに目が行くよね。久美子のベンチも最初はそんなに使わないだろうと思ってて、あとでロケハンし直したりしている。

大人数のキャラクターがいる作品。工夫していることは。

武田 楽器とキャラクターが乖離しないようにしている。キャラクターとキャラクターの組み合わせとかも考えつつ、キャラクターを構成している。

原作小説からアニメ化するにあたって工夫したことは。

石原 キャラクターデザインはぜんぜん違うデザインにする、という案もあったが、アサダニッキさんの原作表紙絵を参考にしている。表紙絵に描かれないキャラクターは随分悩んだ。

小川 キャラクターデザインは再考に再考を重ねた*5。石原さんの好みに寄せすぎず、でも石原さんにヒットするようなデザインを…というようなゲームみたいになってた。

石原 可愛いキャラクターを、という案もあったが、作品にシリアスな展開もあり、現在のものになった。

キャラクターを一人選ぶとするなら誰を選ぶか。

武田 久美子。どういうキャラクターなのか、というのをあまり考えずに書き始めた。久美子の深掘りをしていくのが3期の内容。

石原 優子。1期であんな汚れ役にしてしまって申し訳ないという気持ちから。

小川 あれがあっての優子ですよ。あれで好きになるんですよ。ある種の親心ですね。自分は、あすかと言わざるを得ないです。

3期について。

石原 今回は『アンサンブルコンテスト』の舞台挨拶だけど、正直に言うと頭の中は3期のことしかない。

小川 『アンサンブルコンテスト』を見ていると、3期で学年が上がっていることで混濁する。「なんで優子がいるの!?」と思うことも。『アンサンブルコンテスト』は助走だったな、と。自分を含め、スタッフにブランクがある、1期放映開始から約10年経っていて、高校の時に「ユーフォ見てました」っていう人が入社してくる。社内スタッフも変わっていく中でうまくできるか。そう考えながら『アンサンブルコンテスト』に取り組んだが、3期に向けて楔が打てたと思う。

 

 

以上です。
聞き取り漏れについてはご容赦を…。誤りがありましたらご指摘いただけると幸いです。

舞台挨拶の内容も面白かったですし、3期に向けて着々と準備が進んでいっていることに嬉しくも思うんですが、もう少し『アンサンブルコンテスト』の内容に突っ込んだお話も聞きたかったなあという気持ちもあったり。。。

ちなみに舞台挨拶内で投影された石原さんの取材写真は『響け!ユーフォ二アム2 コンプリートブック』P108~111にある取材写真とは違う写真でした。

同日の次の上映回でもお三方の舞台挨拶があったのですが、一人一公演の申込みということで断念。そちらもどんな話をされたのか気になります…!

*1:2021年に発売された『「響け!ユーフォニアム」5th Anniversary Disc~きらめきパッセージ~』。

*2:『届けたいメロディ』は小川さん初監督作品。

*3:2期4話。希美とみぞれのエピソードだったからあすかメインの『届けたいメロディ』では削られてました。

*4:京阪宇治駅の北側に「お茶と宇治のまち歴史公園」ができましたね。

*5:このあたりは『響け!ユーフォニアム キャラクターメイキングラフ集』に詳細な経緯が載っています。キャラデザを担当した池田晶子さんのコメントから、石原さんや山田さんからのいろんな要望に答えながら試行錯誤された様子が伝わってきます。